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【読書の秋】『若草物語』のベスが好き!トラウマ級に影響を受けた大切な本の登場人物

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一説には、幼少期において本好きの子どもたちの間で『赤毛のアン』派か『若草物語』派に分かれる傾向があるようです。

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それでいうと、私はかなり熱心な 若草物語の子どもでした。

けれどそれはこの記事のように「女に仕事を!」「女性に自律を!」という視点から好んでいたわけではありません。

むしろジョーの生き方は素敵だけど、とくに惹かれなかった。

では、ジョーやエイミーのような生き方に惹かれずして、一体この物語の何に惹かれたのか?

 

今回は読書の秋ということで、私の人生にトラウマ級の影響を与えた“ある人物”について書いていきたいと思います。

※以下、ネタバレ満載なのでご注意ください。

 

 

若草物語について

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若草物語(原題『Little Women』)は、

アメリペンシルベニア州出身の作家 Loisa May Alcott ルイザ・メイ・オルコットによって書かれた自伝的小説。

1868年に出版された後1869年に『続 若草物語』が、1871年に『第三若草物語』、1886年に『第四若草物語』が出版されました。

19世紀後半のアメリカを舞台にマーチ家の四姉妹の青春や結婚などについて書かれており、姉妹の関係性や当時の女性の生き方を伺い知ることができる内容となっています。

また、南北戦争の時代、当時の黒人との関係性、奴隷解放や奉仕精神など、良くも悪くもアメリカ社会の躍動が自然と感じられる場面もあり、何かと学ぶことも多い作品です。

若草物語』にも“ハンナ”という黒人のお手伝いさんが登場します。お手伝いというより乳母に近い存在で、母の代わりに姉妹に助言をしたり心配したり…という家族的なポジションで書かれています。

 

四姉妹は作者の実際の姉妹たちがモデル

作者を次女のジョーと見立てて物語が展開していきます。

 

若草物語』は多くの出版社から刊行されているので、それぞれの訳者やイラストで趣が異なるのも魅力です。

▲この挿絵が一番好き。メグの髪型だけはどこの出版社も何となく統一されているのがおもしろい。

▲子どもが親しめるようにアニメや漫画調のイラストもたくさんあります♡

 

これまで多くの映画や舞台となり、2020年には映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語が、シアーシャ・ローナン主演で公開されました。


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2020年グラミー賞で衣装部門を受賞。主演にエマ・ワトソンフローレンス・ピューなどが出演し話題となりました。

 

登場人物は四姉妹とその母親、彼女たちをとりまく人たちで構成されています。

時に騒々しいほど賑やかで、時に人生の生きづらさにもがく姉妹たちの葛藤も作品の見どころです。

 

メグ(マーガレット・マーチ)

長女。しっかり者で少し保守的。

当時の“女性らしくあること”に幸せを見出し、結婚に意欲的。のちにブルックと結婚。

ジョー(ジョゼフィーヌ・マーチ)

次女。活発で感受性豊か。

小説家になることに熱意を燃やし、自分の望みと社会での在り方に悩みながら成長していく。作者のルイザが自らを投影しているキャラクター。

ベス(エリザベス・マーチ)

三女。物静かでおとなしい。

引っ込み思案だが優しく思慮深い性格。音楽やピアノが好きで、それがきっかけで気難しい老人とも打ち解ける。

エイミー(エイミー・マーチ)

四女。少しおませで社交界に憧れがある。

美術が得意で感性も豊かなためジョーとはよくケンカする。のちにローリーと結婚。

ミセス・マーチ

四姉妹の母。

従軍している夫に代わり、マーチ家の大黒柱として描かれ四姉妹の精神的支柱。

四姉妹それぞれの性格はこの母親から受け継がれた一部とみることができ、四姉妹に大きな影響を与えている人物。

ローリー

四姉妹の隣人でお金持ちの息子。活発な性格でマーチ家からも愛される。

ジョーに夢中になるが失恋。その後、様々なことを経てエイミーと結婚する。

▼上記の映画ではティモシー・シャラメが演じています。


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トラウマ級の思い出と大切な記憶

続 若草物語 (角川文庫)

私にトラウマを植え付けた、でもそれ以上に大切な人物。

それは四姉妹の三女にあたる

リザベス・マーチ、通称 ベスです。

あまり目立たず控えめな性格なので、当時の友だちからもあまり人気ではなかったのですが、私は幼稚園にしてかなり盲目的なベスファンでした(笑)

だって姉妹のなかで一番優しくて、一番真面目で、一番我儘言わなくて、それなのに一番体が弱いんだよ!??

ほかの姉妹がさぼった貧しい人たちの看病を、体調が悪いなか一人で出向いていって、感染して命が危ないほどの状態になったんだよ!!?結局それが原因で病弱になっちゃったんだよ!!?

 

なんでこんな良い子が、こんな重い十字架背負って生きていかなきゃならんのだ!と子供ながらにその不条理に対してめちゃくちゃに庇護欲が湧いたのです。

最終的に「もうこの姉妹には任せてらんない!」「大きくなったら私がベスと一緒に住んで面倒を見る!」なんて言ったり(笑)

 

物静かだけど聞き上手。

死と向き合いながらも他者に優しくて、周囲を感化させる力もあり、音楽やピアノを愛していたベス。

こんなに強い子、いない。

こんなに優しい子、いない。

当時うまく言葉にはできなかったけど、小さい私はそんな風に思っていて、とにかくベスという少女に夢中でした。

 

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それから部活などで音楽一色の毎日になった私は、読書そのものから距離を置いた生活に。

けれど読書感想文の季節になり「部活も大変だし、パパっと簡単に書けるものないかな~」と不純な理由で迷っていたところ、若草物語の続編があることを知りました。

お、若草ならストーリーも知っているし、ちゃんと書けば児童小説でも大丈夫だろう…

なんて軽い気持ちで読みだしたのですが…

 

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ベスは亡くなりました。

病に抗わず、静かに綺麗に死んでいきました。

 

 

 

ショックだった。

とにかくものすごい衝撃で、一瞬にして周囲の音が消えて、本当に体が固まったみたいに呆然としてしまいました。

とてもフィクションとは思えない、まるで自分の大切な思い出ごと誰かにむしり取られたような感じ。

そして悲しみと同時に急に私を襲った感覚。それが強烈な恥ずかしさと後悔の念でした。

 

若草物語を読んでからそれまで、ベスの死を知らずに過ごしていた自分。

大切な人の死を知らず、その人のことを気にも留めず、まるで別の世界を生きていました。そのくせ「読んだ本のなかでベスが一番好き!」と自慢げに大口叩いたりして。

それってすごくかっこ悪くてダサかったし、惨めだったし、べスに対してめちゃくちゃ失礼な気持ちでいたんだなって、すごくいたたまれなかった。

 

同時にベスは絶対こういう人間を責めたりしないんだろうな…というやるせない気持ちなんかもごちゃ混ぜになって…

とにかく申し訳なくて恥ずかしくて、次から次へと「ごめんね、ごめんなさい」と涙がとまりませんでした。

本の人物に対して何もそこまで…と思いますよね(笑)当時の私にも頭の片隅にその感覚がなかったわけではありません。けれどちょうど多感な時期だったこと、そして何より本当に思い入れのある人物だったので、「ただの本のこと」と現実にかえることにも罪悪感を感じたのかもしれません。

 

つまらないことですが、これが大好きなベスの死から受けた、忘れられない私のトラウマです。

今でも当時のことを思い出すと顔が熱くなり、身が縮こまるような、いたたまれない気持ちになります。

 

エリザベス・マーチという生き方

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トラウマを植え付けた一方で、ベスの死は私にとても大切なことも教えてくれていました。

 

それは

人の言葉や行動だけに価値を感じないようにする

ということ。

 

学生生活に始まり、社会はとかく「声に出した者」「行動した者」から順に評価される世界。

小さい頃は自分の意見を周囲にはっきり言える子が“しっかりしてる子”だったし、社会ではプロジェクトを立ち上げたり新規契約を獲得した人が評価対象になりがち。

民主主義で資本主義なのだからそうなるのは当然で、もちろんそこに疑問はありません。私もそんな社会を受け入れて必死で生きてきましたし、今も特にそのシステムに不満はなく生きています。

 

けれどベスの生き方、そして死に方を知ってからは、

 

声をあげない人に意見がないわけじゃない。

留まることで生まれる人生の美しさもある。

 

という、当たり前のことを気に留めるようになりました。

 

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とくに大人になった今、それは自分の生き方にもそのまま跳ね返っていて、

自分の日常と照らし合わせながら「ベスという生き方」についてふと思いをめぐらすことが増えています。

 

重要だけど目立たない仕事をして、それが誰からも気づかれなかったとき

ぐっと自分の意見を見送ったあと、誰かから強い言葉を受けたとき

前進のみを正義とする環境に身をおいたとき…

 

コロナ禍になると、さらにベスを思い出す機会は多くなり(ベスが患った猩紅熱は感染症でした)

その度になぜあんなに気高く、周囲を一度も責めることなく穏やかに逝くことが出来たのか、彼女の心の強さには驚かされるばかりでした。

 

きっと人生を何周したって、ベスのように強く優しい生き方は私にはできない。

ならせめて、一見すると地味で自らの意見がないように見えてしまうような彼女の生き方を「素敵だな」と思う気持ちはずっと忘れずに生きていきたい。

しっかり自己主張する人や新たな開拓をする人が偉大だと思う一方で、その動きを受けて微笑んで聞いてくれる人たちがいることも大切にしたいと思うのです。

 

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肌寒くなり、ますます読書への熱が灯る季節。

あと少ししたら、あっという間にクリスマスですね。

 

クリスマスの朝、母から姉妹たちへ色違いの聖書をプレゼントされるシーンで幕をあける『若草物語』。

今年も色々ありましたが、

ベスを身近に感じながら、せめて温かい気持ちでこの季節を迎えたいと思います。

 

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ここまでお読みいただきありがとうございました!

今後もインドア趣味を中心に、楽しいことや学べることについて書いていきたいと思いますので、お時間があるときにおつきあい頂ければ嬉しいです。

 

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