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【Radio Free Europe】「壁」の向こうに呼びかけ続ける放送局

 

最近よく目にするようになったメディアの一つ Radio Free Europe

リアルな戦場の映像など、日本国内メディアでもよく使用されているなと感じていた。

興味をもち調べてみたところ、奇しくも冷戦時代に大きな目的をもって設立された報道機関なのだそうだ。

 

今回はRadio Free Europeの歴史と現在、そして今後の役割について自分なりの考えをまとめていこうと思う。

www.rferl.org

 

 

概要と歴史

 

Radio Free Europe(以下RFE)アメリカ出資によるラジオ放送、及び報道機関。

現在の本部はプラハ

1949年ニューヨークにおいて「自由欧州のための国家委員会」が設立され、RFEはこの組織の放送部門を担っていたのが始まりなのだそうだ。

 

当時の本部は西ドイツのミュンヘンに設けられ、1950年にはチェコスロバキアに向けて最初の短波放送を送信。

電波妨害を受けながらも粘り強く東に向けて放送を続けた。

これを皮切りに続々と西側の情報を伝え、東側各国の市民に訴えかけることで、その後の民主化運動における契機の一端を担ったと言われている。

 

個人的に驚いたのが、当時はCIAにとってこの放送が東側に向けた一般的な心理戦の一部でもあり、資金提供もされていたということ!

放送のガイドラインなどもCIAが作成し、当時東側の情報を最も多く収集していた機関の一つとも言われていたらしい。そのためかスタッフの暗殺事件やその未遂事件なども少なからず発生した。

 

1971年RFEはデラウェアにおいて非営利団体として再認可され、国際放送局の監督下に移る。何とこの時までは公に知られていない組織だったという。

確かにドキュメンタリーとかで存在は知っていたけど、この組織の名前は聞いたことなかったわ…すごい……

参考:Wikipedia “ラジオ・フリー・ヨーロッパ”

 

設立目的・対応言語

 

設立目的


RFEの最も特徴的な部分は、その設立目的にあるようだ。

 

 

RFE/RL’s mission is to promote democratic values and institutions and advance human rights by reporting the news in countries where a free press is banned by the government or not fully established.

In 23 countries, RFE/RL journalists ​provide what many people cannot get locally…

 

引用元:Radio Free Europe/Radio Liberty “About Us”

 

RFE / RLの使命は、政府によって自由な報道が禁止されていたり確立されていない国でニュースを報告することで、民主的な価値と制度を促進し人権を推進することです。

RFE / RLジャーナリストは、23か国で、多くの人々が地元で入手できないものを提供しています。

 

 

冷戦期には多分に心理的政治要素をもつ報道機関だったRFE。

ここまでハッキリと“民主主義の流布”という目的を掲げることには、報道機関として賛否両論あるかもしれない。

私自身、一つの政治思想をここまで明確に表明していることには面食らってしまった。

けれど、この点がRFEの最大の特徴であることは間違いなく、最後にはこうも締めくくられている。

 

 

RFE/RL strives to meet the highest standards of objective journalism and report the facts, undaunted by pressure or attempted influence​.

 

引用元:Radio Free Europe/Radio Liberty “About Us”

 

“圧力や試みられる影響に臆することなく事実を報告するよう努める”

言うまでもなくこれは報道の基本姿勢だ。

けれどそれを貫くのがいかに難しいことか。日本メディアを見ていても感じることは多くある。

それに前述した暗殺や命の危険を体験したという歴史を知ったからか、この言葉は余計に心に響いた。

実際に今回の侵攻でもロシアからのリポートは多くあがっている印象がある。

 

こちらはRFEの歴史が短くまとめられている記事だ。

nordot.app

侵攻の数年前から世界の変化を感じとり、1990年以降縮小していた活動規模を近年拡大させたという。

 

 

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」の報道自由度ランキングでは、

06年には世界10位だったハンガリーが19年は87位に。15年に18位のポーランドも19年59位と急落した。

ちなみに同年の日本は67位である。

 

引用元:47News “共産圏変えたラジオ・フリー・ヨーロッパ”

 

対応言語

RFEはヨーロッパ・中東・中央アジアを中心に、23か国27言語にニュースを提供するため、各地域に地元記者のネットワークをもっている。

REF/RL言語サービス

 

 

We rely on our networks of local reporters to provide accurate news and information in 27 languages and 23 countries.

RFE/RL also reaches Russian-speaking audiences in 26 countries (12 beyond the RFE/RL region) and globally via the Current Time digital television network.

 

引用元:Radio Free Europe/Radio Liberty “About Us”

 

なお、600人を超えるフルタイムジャーナリスト、1300人のフリージャーナリストが働き、21の支局で活動している。

 

 

With over 600 full-time journalists, 1,300 freelancers, and 21 local bureaus, RFE/RL is one of the most comprehensive news operations in the world.​

 

引用元:Radio Free Europe/Radio Liberty “About Us”

 

RFEの拠点地域を見ると、広くヨーロッパと言っても比較的情勢が安定しているところは少なく、多く支店を構えているところにRFEにとって何らかの意味があるのが見てとれる。

RFE/RL Language Services - Radio Free Europe / Radio Liberty

 

主なコンテンツ

RFEの報道コンテンツには日本では報道されることがないだけでなく、

ヨーロッパという複雑な大地と歴史をもつ「一部の世界」で、どのように時間が流れているのかを理解できるコンテンツが多い。

ぜひ自分の合う媒体でRFEの<伝える思い>を聞いてみてほしい。

 

Students Raise Cash For Russian Coach Fined For Removing ‘Z’ Sign


www.youtube.com

※Sakharov(Andrei Dmitrievich Sakharov)はソ連時代の市民改革者として知られる人物。

過去に熱核兵器開発に携わった科学者だったが、その影響や人権などへの危機意識を高め、後年は軍拡を抑止する立場をとった。1975年ノーベル平和賞受賞。

 

Official Site:Radio Free Europe/Radio Liberty

Twitter:Radio Free Europe/Radio Liberty (@RFERL) | Twitter

YouTube:https://www.youtube.com/user/rferlonline

Podcast:Podcast: The Week Ahead In Russia - Radio Free Europe / Radio Liberty

Instagram:https://www.instagram.com/rfe.rl/

facebook:Radio Free Europe/Radio Liberty

 

呼び続ける誰かがいるということ

言うまでもなく、今はSNSの時代だ。

より早くよりマクロで、より自由な情報を、誰もが発信し受けとれる時代でもある。

一方現在のロシアでは多くのSNSサービスが停止され、受けとる側も情報を信じない人が多くいるなど「発信すること自体が無駄ではないか」と思われる事もあるかもしれない。

では、現在におけるRFEの存在意義とは一体何なのか。

 

それは組織であるが故の放送の耐久力、つまり「呼びかけ続ける力」だと私は思う。

SNSは伝播時間が早く極限まで個人的であるが故に、情報そのものへの「飽き」るスピードも早い。

正確性はもとより、その情報を発信するかシェアするかも個人の感情に依存しており、結果的に検索結果の優位性にまで関わってくる。

また、あることをきっかけに(今回の非人道的な行いなど)、これまで寄り添おうとしていた個人の感情が大きく変わってしまうこともある。

<向こう側>へ声を送り続けたいと思っていた人も、個人では静かに心が折れてしまうことだってあるだろう。

RFEは、そういった私たち自身の気持ちを持続させることにも一役買っていると思う。

例え自分が「分かりあえないかもしれない」と思ったとしても、それでも声を送り続けようとする存在がいることに、私は心強さを感じる。

 

 

また、世界にはBBC(英)、NY TIMES(米)、Le Monde(仏)、Al Jazeera(中東)、The Times of India(印)など、一定の評価を得ている大手メディアというものがある。

これらの情報機関は中立性・透明性を第一にしているので、客観的に触れるには重要なメディアだ。(もちろんどれも自国にとって優位な報道になるよう色付けはしているが、その濃度が比較的薄いという意味で)。

一方RFEは、強く民主主義を広めようという信条のもと動いているので、この点で言うと大きく西寄りの報道であることは間違いない(そもそも出資がアメリカだし…)。

 

けれど、自身とは反する立場の相手に絶えず呼びかけ続けるという姿勢は、中立性や透明性と同様に大きな報道の力だとも思う(向こうからしたら迷惑で壮大なプロパガンダではあるだろうが)。

 

 

この世に100%や絶対はない。

良かれ悪かれ傍から見たら何かに染まりきっているような状況にも、そこには<例外>が必ずある。染まりたくない、あるいは染まることに疑問を抱いている人はどんな状況でも必ず一定数存在する。

もし自分がその「例外」だと感じたとき、RFEのような存在はどのように映るだろう。少なくとも孤独感や猜疑心を和らげる一助にはならないだろうか。

 

「私たちはあなたを見捨てていない」と訴え続ける姿勢は、今後ますます大切になってくると思う。

そして、私にはそれが「分断」に対抗できる唯一の力だとも思えるのだ。

 

 

念のため何歩か引いた視点で切り替えて言うと(歴史を専門に学んできた身でもあるので)、

パンデミックに始まり、一度動きだした一連の歴史はそうそう止められるものでもないということは分かっている。

戦いを始めるのは簡単だが、終わらせるには私たちが想像する以上の時間もお金も心労(個人的な理由や感情を抑え、同じ平和的価値観を求めるための忍耐力)も要ることだろう。

 

だが同様に、歴史の中には必ず止められない流れに<抵抗>する人たちがいた。

後世から見て<無駄な抵抗>と思えるものさえ歴史の一部にはなる。一つの事象はどこかで何かにはつながっているし、今の時代SNSがあるなら尚更だ。

ならばせめて、私は今抱えている気持ちに正直に生きていたくて、それが理由でRFEのような「人間特有の力」について書きたくなったのだと思う。

 

冷戦時代、RFEはその「人間特有の力」を「伝え続けること」で証明した。

この時代ではどうだろうか。今は何も分からない。

唯一言えることは、冷戦時代においても同様に、RFEは未来など分からぬまま放送を続けたということだ。

私たちの価値観と反する立場の人々に、彼らがどのような言葉を投げかけるのか今後も注目していきたいと思う。

 

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ここまでお読みいただきありがとうございました!

今後もインドア趣味を中心に、楽しいことや学べることについて書いていきたいと思いますので、お時間があるときにおつきあい頂ければ嬉しいです♡

 

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